【クリアレビュー】アナザーコード リコレクション:2つの記憶 / 記憶の扉

 今回は、1月19日にNintendo Switch向けに発売されたミステリアドベンチャー「アナザーコード リコレクション:2つの記憶 / 記憶の扉」のクリアレビューとなります。

 本作は、2005年に「さわれる推理小説」というキャッチコピーでニンテンドーDS向けに発売された「アナザーコード 2つの記憶」と、その続編となるWii用ソフト「アナザーコード:R 記憶の扉」のリメイク作品となります。個人的にも、DSのローンチ時期に遊んだ一作目は、タッチやスリープ機能を用いた謎解きのギミックなど、思い出深い作品です。

 そしてこの度、約20年の時を経て、フルリメイクとなります。率直に言うと、今回のリメイク版では、ポジティブな点だけではなく、良くも悪くも気になる点もあります。3D化されたマップや追加されたキャラクターボイスは、ビジュアル的に新鮮な体験を提供している一方で、簡略化された謎解きやカメラワーク、演出面の問題など、アドベンチャーゲームファンとして看過できない点もあります。では、早速レビューに入っていきましょう。

目次

アナザーコード』について

 冒頭でも紹介したように、今回レビューしていく「アナザーコード リコレクション:2つの記憶 / 記憶の扉」は、2005年にニンテンドーDS向けに発売された「アナザーコード 2つの記憶」と、2009年に続編としてWii向けにリリースされた「アナザーコード:R 記憶の扉」の二作品が収録されたリメイク作品となっています。

 オリジナル版を手がけていたのは、今はなきゲーム制作会社・CING。CINGは、「J.Bハロルドシリーズ」や「藤堂龍之介探偵日記」などハードボイルドなアドベンチャーゲームを数多く制作していた宮川卓也さん、鈴木理香さんなど元・リバーヒルソフトのスタッフが設立した会社でした。CINGでは、今回リメイクされた『アナザーコード』をはじめとして、個人的にも大好きな『ウィッシュルーム』など、上質なアドベンチャーゲームを手がけていました。

しかし、名作の輩出とは裏腹に、2000年代後半以降、CINGの経営状態は悪化していきます。特に、開発元請けを担っていた『王様物語』の延期に伴う開発費の膨張や、新企画の不採用が相次ぎ、2010年には会社の解散を余儀なくされました。そんなこともあり、CING作品に再会することはないだろう…とファンとしては長年諦めムードでしたので、今回のリメイクは待望の一作でした。リメイク版の開発は、元シングのスタッフも在籍するアークシステムワークスが務めています。

 このあと詳しく見ていきますが、約20年振りのリメイクとして、『リコレクション』では、原作のゲームプレイを3Dアドベンチャーとして一新しています。ゲームフィールドはフル3Dになり、キャラクターボイスやシナリオの一部加筆、謎解きの刷新など良くも悪くも再構築されたアドベンチャーゲームに仕上がっています。

刷新されたゲームプレイ

・遊びやすさが重視されたプレイフィール

 まずは、『リコレクション』で刷新されたゲームプレイについて詳しく見ていきましょう。そもそものゲームプレイについて、DS版とWii版では異なるゲームスタイルが採用されていました。DS版はトップダウン視点で、キャラクターの操作と「謎解き」にタッチペンやDSのハード機能を用い、Wii版では、横スクロール視点でキャラクターを操作し、「謎解き」には、Wiiリモコンを活用した一人称の「ポイント&クリック」で進行していくようになっていました。

 これらのプレイスタイルは『リコレクション』では、完全に置き換えられ、共通のゲームシステムが採用されています。プレイヤーは、三人称視点でキャラクターを操作するオーソドックスな3Dアドベンチャーとなっており、物語の舞台を自由に歩き回り、数多くの謎解きに向き合っていきます。

 ちなみに、ゲームが3D化されたことで、プレイヤーが迷う可能性も増えています。この対策として、ゲームにはナビゲーション機能が備わっています。これは、プレイヤーが迷った際に目的地を指し示す矢印が表示されるもので、初心者でも物語をスムーズに進められるようになります。他にも「謎解き」のヒント機能も用意されているなど、アドベンチャーゲームになれていないユーザー向けの遊びやすさは徹底されています。

・リコレクションの課題:謎解きについて

 一方で、これらの大幅なシステムの変更は、ゲームプレイにおいてポジティブなだけではない弊害も生んでいます。例えば、「謎解き」についてです。本作で出会う謎解きは、基本的には「カギのかかった箱を開ける」であるとか「館の扉を開く」のような、そのシチュエーションに沿ったギミックが主となっています。ミステリーゲームにも色々なジャンル・パターンがありますが、本作ではヒントや手がかりを集めて「推理」をするというよりも、その場に用意されたギミックを組み合わせることで、謎を解いていく、というスタイルです。

 例えば、DS版では「さわれる推理小説」という謳い文句の通り、ゲームのハード機能を活かした謎解きが用意されていました。例えば、土ホコリをタッチで払う、ハンドルを回す、マイクに息を吹きかける、など、「謎」と「ハードギミック」を組み合わせることで、プレイヤーが世界に介入しているような実感を持てました。

 もちろん、DSの機能を使わないオーソドックスなパズルも数多く用意されていましたし、謎解き自体は簡易なモノがほとんどではありました。ですが、テキストベースのアドベンチャーゲームでは難しい「手ざわり」を取り入れたことで、ゲームと一体化したような面白さを確立していました。

  一方で、『リコレクション』では、それらの「手ざわり」を伴う「謎解き」が、Switchのハードウェアの制約により再現できなくなっています。そのため、およそ全ての「謎解き」が新規で設計されているのですが、実際に出来あがった謎は、ボタンを押していくだけの極めてオーソドックスなモノになっています。

もちろん、オーソドックスな「謎解き」が悪いわけではありませんが、シリーズの持っていた独自性には欠けています。さらに、ゲーム全体として「謎解き」の数も少なく「ミニゲーム」のような扱いになっており、ミステリーアドベンチャーにとって重要な、「謎解きや探索」の楽しさが十分に提供されていないのは残念な点です。

アドベンチャーゲームとして

・プロットは踏襲しつつアレンジされたシナリオ

 続いて、シナリオやアドベンチャーゲームとしてのゲーム体験について紹介していきます。『リコレクション』では、過去の二作品が収録されていますが、あくまでもゲームプレイは独立しており、一作目の「2つの記憶篇」から物語が始まり、クリア後に「記憶の扉篇」へとシームレスに繋がっていきます。

 物語は、主人公のアシュレイに一通の手紙が届くところから始まります。そこには、アシュレイが3歳の頃に、亡くなったと思っていた父親・リチャードから、「ブラッド・エドワード島」という孤島に向かうよう書かれていました。怪しさと期待感に動揺しながらも、アシュレイは孤島に向かうことを決心します。

 しかし、孤島へと足を踏み入れたアシュレイを待っていたのは、父ではなく「ディー」と名乗る少年の幽霊でした。死んだはずの父を捜したいアシュレイと、生前の記憶を取り戻したいゴーストのディー。ふたりは互いの目的を果たすため、孤島にそびえる屋敷を探索しながら、父の隠していた真実、そしてディーの死の真相を解明していきます。

 ゲームのシナリオについては、物語のプロットやテーマに大きな変更は加えられていませんが、3D空間での描写やセリフのアレンジにより、物語の展開やキャラクターの感情の表現が緻密になっています。特に「2つの記憶篇」では、主人公アシュレイとディーとの感情の動きをリンクさせるように、出来事の発生タイミングをアレンジするなど、映像表現としての分かりやすさが重視されている印象です。

 また、『2つの記憶篇』と『記憶の扉篇』の2作品は、それぞれ約6〜7時間と8〜9時間のプレイ時間で構成されており、合わせて約15時間のプレイボリュームがあります。作品単位ではコンパクトではありますが、全体としてはアドベンチャーゲームとしては標準的なボリュームとなっています。

・リコレクションの課題:アドベンチャーゲームとして

  ここまで見てきたように、本作は、ボリューム感やシナリオの調整などゲーム全体として丁寧なリメイクが印象的です。ですが、オリジナル版のファンだからこそ、そしてアドベンチャーゲームのファンとしては気になる点もいくつかあります。

 まずは、ゲーム進行の冗長さについてです。さきほど「謎解き」が「ミニゲーム」のようだ、と表現しましたが、実際、ゲーム中の「謎解き」の数は少なく「会話や移動」が中心の受動的な体験となっています。特に、「記憶の扉篇」ではゲームパートのほとんどが「会話」と「移動」、少しの「謎解き」で構成されているので、プレイヤーは少し移動して物語を聞く、という消極的な体験となっています。アドベンチャーゲームとしては堅実な仕上がりではありますが、オリジナル版と比較しても、最新の3Dアドベンチャーとしても、少々冗長さを感じます。

 併せて、3Dアドベンチャーとして気になるのは、ユーザーインターフェースやカメラワークです。特に、カメラワークはくせ者で、マップを移動した際にカメラがキャラクターやオブジェクトに近すぎて、付近をよく観察できない、ということが多発します。特に本作は「ポイント&クリック型」ですので、これらの遊びづらさは、3Dアドベンチャーとして必須のクオリティに達していないと感じます。

 加えて、アドベンチャーゲームとして、指摘しておきますと、今回3Dのリメイク作品としてプレイして感じたのは、演出面の物足りなさです。どういうことかといいますと、そもそも、オリジナル版では立ち絵や3Dモデリングを使用しつつ、ノベル型のゲームプレイが採用されていました。一方で、『リコレクション』では、ストーリーを演出する手段として、コミック風のコマ割りと吹き出しで構成される会話シーンと、ムービーシーンが加わっています。

 特に、ムービーシーンにおいて言えることですが、キャラクター同士の距離感が不自然なシーンや、胸ポケットから12cmのCDが出てくるなど、やや荒唐無稽な描写が3D化によってより目立つようになっています。オリジナル版はテキストベースのため、このような細部に関する非現実的な要素はユーザーの想像力に委ねられていましたが、リメイク版では、これらの細かな不整合がプレイヤーにとって気になる点として浮き彫りになっています。

結語

 フルリメイク作品として、本作は、新旧ファンにとって良くも悪くも、新鮮な体験を提供しています。3D化されたマップや追加されたキャラクターボイスは、視覚的にも新鮮な体験を提供していますが、簡略化された謎解きやカメラワーク、演出面の問題など、オリジナル版と大きく変わったゲームデザインは気になるユーザーも多いと思います。

 もし、ミステリージャンルを一切遊んだことが無い、というのであれば、ゲーム難易度やライトなゲームデザインも含めて一定程度はオススメできます。とはいえ、個人的にはまさにそうでしたが、2005年にアドベンチャーゲーム初心者として本作に触れ、それ以降このジャンルの作品を多くプレイしているユーザーにとっては、やや満足感に欠ける部分もあります。

 ちなみに、ゲーム中に「カイル・ハイド」の名前が少しだけ出てくるなど、ファンサービスとしては素晴らしい点も多く、残るシング作品の復活にも期待したいです。このチャンネルでは、最新のゲームレビューやゲーム紹介動画を定期的に投稿しています。チャンネル登録や評価のご協力をお願いいたします。今回のビデオを最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
目次