今回は10月16日に発売された『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』のクリアレビューです。早速結論ですが、普遍的とも言えるすごろくの魅力はそのままに、近年の作品でやや課題となっていたオンラインモードを抜本から見直したことで『マリオパーティ』シリーズは一つ上の次元の作品になったと感じています。シリーズによって魅力は様々ありますが、本作が掲げる「シリーズ史上、最大ボリューム」というテーマに偽りはなく、最高傑作と呼べる作品に仕上がっています。
また、本作のレビューはシングルプレイモードのクリア、アワードのコンプリートをした状態となります。それでは詳しいレビューに入っていきましょう。
『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』について
まずは『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』について簡単に紹介していきましょう。本作は、1998年にニンテンドー64で発売された『マリオパーティ』から続くシリーズの最新作です。本作でシリーズは通算18作目となり、これまで任天堂のすべての家庭用および携帯ゲーム機で展開されてきました。また、『マリオパーティ』シリーズは国内外で高い人気を誇り、前作『マリオパーティ スーパースターズ』は、国内で約218万本、世界で約1289万本の売り上げを記録しており、世界を代表するパーティゲームとしての地位を確立しています。
しかし、『マリオパーティ』シリーズの歴史は決して順風満帆ではありませんでした。シリーズの変遷をたどると、大きな課題が存在していました。それは、第1作目でゲームルールがほぼ完成されていたという点です。「すごろく形式でミニゲームを行い、スターの数を競う」という基本ルールの完成度が高すぎたため、その後の進化が難しい状況に陥っていました。1作目から5作目まではバランス調整やルールの改善が行われてきましたが、6作目以降は、マイクの導入やWiiリモコンを活用した操作、ルールの大幅な変更など、新たな要素を加えようとする試行錯誤が続きました。
その試行錯誤の集大成ともいえる『マリオパーティ10』では、Wii Uゲームパッドやamiiboの導入、さらにはルールの刷新が試みられましたが、ファンからは否定的な意見も寄せられました。こうした中で、2018年発売の『スーパー マリオパーティ』や2021年の『マリオパーティ スーパースターズ』では、シンプルなすごろくを楽しめる原点回帰を目指した作風へと変化していきます。
本作『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』も、その流れを引き継いでおり、シリーズ初期の作品に近い体験を提供しています。とはいえ、一見すると、「進化が見られないのでは?」という疑問が浮かぶかもしれません。しかし、本作では基本ルールの完成度の高さを尊重しつつ、シリーズの弱点とされていたオンライン要素を強化することで、より魅力的なパーティゲームへと昇華しています。
普遍的なパーティゲームと新たな試み
・ いつでも楽しいマリオパーティ
それでは詳しいレビューに入っていきましょう。本作は公式サイトにも「シリーズ史上、最大ボリュームのパーティが開幕」と記載されているように、舞台となるリゾートアイランドに多彩な遊びの島が点在しています。まずはその中からシリーズの醍醐味であるすごろくを楽しめる「スゴロクの島」から紹介していきましょう。
「スゴロクの島」は従来の「すごろく形式でミニゲームを行い、スターの数を競う」というゲームルールで遊べるモードとなっています。シリーズ経験者はもちろん。初めて遊ぶユーザーでもシンプルな設計のおかげで、すぐに楽しめるパーティゲームとなっています。
基本的なルールは、プレイヤーが好きなキャラクターを選択し、サイコロを振ってマスを進んでいきます。勝敗はマップに現れるスターを集めた数で決まるようになっており、ターンの終了時に行われるミニゲームで勝利し、コインを集めてスターと交換していきます。
とはいえ、単にミニゲームで勝つだけでは勝利できません。ボード上のマスによって、イベントが用意されており、コインが増えるものもあれば全て失ってしまうようなものまであるので運も味方にしていく必要があります。併せて、様々な効果を持つアイテムを駆使することでサイコロの数を増やしたり、スターの位置を変えたりなどボードゲームらしい戦略的なプレイも求められます。
また、ミニゲームに関しても一部、シリーズ作からのリメイクなども用意されていますが、殆どが一新されています。4人で戦うものや2対2、1対3などシリーズならではのユーモア溢れるミニゲームを楽しめるようになっています。これまでのシリーズと比べても3D空間を用いたような立体的なミニゲームが増えているような印象で新鮮な気持ちでプレイできたように思います。併せて、個人的にはJoy-Conのジャイロセンサーなどを用いた体感ミニゲームも多数収録されていたのは非常に嬉しかったです。
・新たな試み「ジャンボリーフレンド」
また、『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』では基本ルールと併せて「ジャンボリーフレンド」と呼ばれる新要素が追加されています。「ジャンボリーフレンド」はランダムで現れる仲間キャラクターとなっており、マリオやヨッシー、デイジーなど様々な仲間たちが登場します。彼らがいるマスにプレイヤーの誰かが到達すると、キャラクターに沿ったミニゲームが開始となり、見事勝ったユーザーは3ターンの間、行動を共にすることができます。
もちろん、ただすごろくが賑やかになるだけではなく、例えば、デイジーはお店が半額になるなど、各キャラクターによって特殊効果が用意されています。それだけではなく、行動を共にしている間はマスで起こるイベントが全て2回発生するようになるというとんでもない効果もあります。例えば、青マスで貰えるコインは3コインから6コインになりますし、アイテムも2回購入でき、スターもコインさえあれば2つ手に入れることが可能となります。とはいえ、メリットだけでなく、デメリットも同様で赤マスで減るコインなども2倍になります。併せて、他のプレイヤーに抜かされてしまうと仲間も取られてしまうので、ミニゲームで勝ったから良しというわけでもありません。
どのタイミングで「ジャンボリーフレンド」と行動をしているかなどの運要素もありますが、タイミングがピッタリと揃うと想像以上に無双状態のようになり形勢逆転を狙うことができます。
一方で、「ジャンボリーフレンド」を獲得するためのミニゲームがやや長く、3~5分かかるのは気になるところです。併せて、終盤の残り2ターンで仲間が登場することもあり、そのタイミングではメリットが薄いため、冗長に感じる場面もありました。とはいえ、戦況を大きく動かす要素としてゲームにメリハリを生んでおり、完成したゲームルールに対しての新たな試みとしては素晴らしかったです。
弱点を克服したオンラインモード
続いてオンラインモードについてみていきましょう。本作では昨今のシリーズ同様に、世界中のプレイヤーとすごろくやミニゲームをオンラインで楽しめるようになっています。とはいえ、シリーズをプレイしたことのある方ならご存知のように、すごろくは最低でも1時間近くプレイする必要があったり、ミニゲームで経験豊富なプレイヤーと対戦する難易度の高さは、楽しさと同時にハードルを感じさせる部分でもありました。
そのような弱点に対して本作では「クッパチャレンジの島」という新しいオンラインモードが用意されています。この島では「クッパアスロン」と「クッパバスターズ」の2つのモードが用意されており、『マリオパーティ』のオンラインを劇的に進化させています。
まず、「クッパアスロン」は1周150マスのコースを舞台に20名のプレイヤーが1位を目指して競争を行う遊びとなっています。従来のルールで150マス?と聞くとめちゃくちゃ冗長なモードなのではと思うかも知れません。もちろんそんなことはなく、本作では集めたコインの数でマスを進んでいくという独自のルールが採用されています。
「クッパアスロン」では3つのミニゲームとニセクッパとのバトルが1セットになっています。ミニゲームは1人用となっており、20人がリアルタイムで一斉にスタートし、コインを集めていきます。コインを一枚でも逃すと順位が変動するため、確実にミニゲームをクリアしていくことが勝負の鍵となります。併せて3つのミニゲームを終えると、ニセクッパとのバトルが待っています。バトルは20人で行い様々なルールで生き残りを賭けたバトルロイヤルとなっており、リタイアしてしまうと後ろに戻されてしまいます。そのため、どれだけミニゲームでリードしていてもバトルに負けてしまうと逆転されてしまうので、最後まで緊張感のあるかけっこを楽しめるようになっています。
もう一つのモード「クッパバスターズ」は8人で遊ぶものとなっており、フィールドで暴れ回るニセクッパの撃退を行っています。倒すためにはフィールドに落ちている木箱を壊し、中から出てくる爆弾をみんなで大砲にセットして攻撃を行っていきます。
戦いは5つのラウンドに分かれており、秒数によって次のラウンドに移るようになっています。各ラウンド終了後は8人で協力するミニゲームを行い、そのクリア率によって戦いを有利に進めていくアイテムを入手できます。アイテムは戦況を大きく変えるので、8人の中で絶対にミスをしてはいけないというなんともいえない緊張感は想像以上にゲームプレイを盛り上げてくれています。
これまでのオンライン要素は、すごろくのターン制によってテンポが緩くなりがちで、間延びしたプレイが課題となっていました。しかし、「クッパアスロン」と「クッパバスターズ」では、リアルタイムでスムーズに進行する設計が施され、これまでにない新鮮なオンライン体験を提供しています。これにより、本作のオンラインは、シリーズの魅力をさらに引き出す素晴らしい進化を遂げたといえます。
よりゲームの世界を楽しめるシングルプレイモード
続いてシングルプレイモード「パーティお手伝いの旅」について紹介していきます。これまでシリーズでは携帯向けの作品などで1人用のモードは用意されていましたが、家庭用ゲームとしてはおおそよ初の実装となります。
このモードではみんながすごろくを行う会場の設営に苦労しているカメックのためにプレイヤーがお手伝いをすることになります。ゲームではすごろくの舞台を自由に移動することができ、各所で困っているキャラクターを助けながら「リトルスター」を集めて進行していきます。
基本的にはミニゲームをクリアすることが目的ではありますが、お使いやクイズなども用意されています。また、リトルスターを特定の数集め終わると、ボスとのミニゲームが待っています。ボスと対峙する際は、マップにいるマリオやルイージなどのキャラクターを助けることでサポートをしてくれるようになっているので、マップの探索をしっかりと行うことでゲームをスムーズに進めていくことが可能となります。
内容自体は非常にシンプルですが、すごろく中はあまりしっかりと見ることのなかった建築物やオブジェクトをみながら進めていくプレイは想像以上にゲームの世界をより知ることができ、新鮮な体験となっています。
個人的に『マリオゴルフ』や『マリオテニス』のようなタイトルにおけるシングルプレイが非常に好きなのですが、本作のシングルプレイはそれらと比べるとコンパクトな印象です。とはいえ、リゾートアイランドの解像度がグッと上がりましたし、パーティモードをより楽しむことができるモードになっていました。
最大級に相応しい遊びの数々
ここまで紹介したように本作では多様な遊びが用意されており、まさに「シリーズ史上、最大ボリューム」に相応しい一作となっています。しかし本作の遊びはこれだけでは終わりません。そのほかにも大きなコンテンツとして「体感パーティの島」と「ミニゲームハーバー」が用意されています。
「体感パーティの島」はその名の通りではありますが、Joy-Conのモーションセンサーなどを用いた体感型のゲームが楽しめる島となっています。ゲームはJoy-Conを二つ持って翼のようにステージを飛び回る「パタパタ・アドベンチャー」、リズムに合わせて料理を行う「リズムクッキング」、傾きを利用して仕掛けを解いていく「キノピオファクトリー」の3つが用意されています。
数こそ少ないですが、どれもが直感的に楽しめるものばかりとなっており、すごろくやミニゲームと比べてもよりハードルが低く設定されています。そのため、誰もがすぐに楽しめるパーティゲームとしては非常に適切な遊びとなっています。
また「ミニゲームハーバー」は従来のシリーズと同様に様々なミニゲームを自由に遊ぶことのできるコンテンツとなっています。好きなものを選んで遊ぶもよし、オンラインで競うもよしとミニゲームで遊び尽くすことができます。併せて、「クッパアスロン」や「クッパバスターズ」の専用ミニゲームもプレイ可能となっています。個人的に「クッパアスロン」のニセクッパとのバトルに負けてしまうことが多かったので、このモードで練習していました。
全体として良い意味で目移りしてしまうほどにボリューム感があり、どのコンテンツもしっかりと作り込まれておりそのクオリティの高さには驚かされます。一方でコンテンツ量が多いからこそ、少しだけ気になったのはオンラインにおけるマッチングにムラが生まれてしまっている点です。
というのも本作では「スゴロクの島」「ミニゲームハーバー」「クッパチャレンジの島」でオンラインが用意されているので、現状としては「すごろく」でのマッチングが少ししづらくなっています。もう少しハードルを下げてオンラインで「すごろく」を楽しめる仕組みなどがあれば良かったかなとは思います。
結語
いかがでしたでしょうか。
普遍的とも言えるすごろくの魅力はそのままに、近年の作品でやや課題となっていたオンラインモードを抜本から見直したことで『マリオパーティ』シリーズは一つ上の次元の作品になったと感じています。「最大ボリューム」がもたらす体験は決して量だけでなく、質もしっかりと保たれており、そのクオリティの高さは最高傑作と呼ぶに相応しいです。『マリオパーティ』の今後の進化が楽しみで仕方ありません。