今回は10月10日(アーリーアクセスは10月8日)に発売された『ドラゴンボール Sparking! ZERO』のクリアレビューです。約17年振りのシリーズ最新作として大いに期待されていた本作。個人的にも「METEOR」は思い出深い作品ですので、どのような作品に仕上がっているのか楽しみにしていました。まず、結論ですがスピード感溢れるアクション、最多となるキャラクター数、シリーズらしさとも言える遊び心など、「Sparking!」シリーズの最新作として間違いのない作品だと感じています。一部、難易度のバランスや物足りなさのある新要素など気になる点もありますが、17年という期待値に対してしっかりと応えてくれる一作に仕上がっています。それではレビューに入っていきましょう。
また、クリアという概念がやや難しい作品ですので、今回はエピソードモード21種類のクリア、キャラクター解放を行った状態でのレビューとなります。
『ドラゴンボール Sparking! ZERO』とは
まずは『ドラゴンボール Sparking! ZERO』について簡単に紹介していきましょう。本作は2005年にPS2で発売された『ドラゴンボールZ Sparking!』シリーズの最新作です。シリーズはこれまでドラゴンボールのゲーム化作品で採用されてきた2D型の対戦格闘ゲームではなく、およそ初めて3D空間を用いたバトルへと変更になりました。舞空術や瞬間移動、ラッシュ攻撃からのかめはめ波など、ドラゴンボールの漫画やアニメに入り込んだような没入感は多くのファン作品を魅了しました。

また、シリーズのもう一つの魅力として多数のプレイアブルキャラクターが挙げられます。一作目の90名だけでもその多さに驚きますが、三作目となる「METEOR」ではなんと161名にまで増加しており、ドラゴンボールの登場キャラクターは殆ど登場しているようなボリューム感となっていました。

その後、シリーズは派生作品として「タッグバーサス」や、「RAGING BLAST」シリーズ、「アルティメットブラスト」が発売されてきました。本作「Sparking! ZERO」は2007年に発売された「METEOR」の後継作であり、約17年ぶりの続編タイトルとなります。
この後詳しく紹介していきますが、「Sparking! ZERO」では17年ぶりということもあり、シリーズ発売時に放映されてなかった『ドラゴンボール超』の物語やキャラクターも収録されています。そのため、プレイアブルキャラクターはシリーズ最多の182名と最新作に相応しいものとなっています。
また、アクション面に関してもハードスペックの向上に伴い、これまででは実現できなかったであろうスピード感溢れるバトルを体感できるようになっており、まさに至極のドラゴンボール体験を楽しめます。

ハイスピード武闘アクション
・ 没入感満点の「ごっこ遊び」
それでは『ドラゴンボール Sparking! ZERO』のレビューに入っていきましょう。まずはシリーズの大きな魅力であるアクションから見ていきます。本作では、孫悟空やベジータなど様々なドラゴンボールのキャラクターを操作して戦う対戦型格闘ゲームとなっています。基本的な操作は「Sparking!」シリーズを踏襲しており、スティックでの移動、△や◻︎ボタンで攻撃、R2で気を溜めることで必殺技などを行っていきます。

とはいえ、ただグラフィックが綺麗になった「Sparking!」というわけではなく、想像以上にスピード感の増したアクションは初めてシリーズに触れる方はもちろん、経験者こそ驚きがあるかと思います。
本作ではこれまでのシリーズにおける通常の移動速度がダッシュに相当するようなスピードに変化しているため、全体の動作が一回りか場合によっては二回りほど早くなっています。そのため、怒涛のスピードで攻撃を撃ち合う展開はまさにドラゴンボールの戦闘の一コマを切り取ったかのような没入感があります。

それこそ初心者同士であれば、ボタンをある程度ガチャ押ししながらの殴り合いですら、名シーンを見ているようですらありますし、「ごっこ遊び」として爽快感をしっかりと感じることのできる戦闘が意識されています。
また、「ごっこ遊び」として注目したいのは変身シーンや必殺技などにおけるモーションの格好良さです。悟空のかめはめ波やベジータのギャリック砲などキャラクターによって様々な必殺技が用意されていますが、発動時に発生するエフェクトやキャラクターの表情、カメラワークなど、どれもが漫画やアニメを思わせる作りとなっています。

特にゴジータブルーの必殺技「メテオエクスプロージョン」は映画『ドラゴンボール超 ブロリー』でも印象的だったクロスした腕を天に掲げ集中線がバッと出てくる演出もしっかりと表現されており、技を発動するだけで興奮してきます。バトルスピードの向上や卓越した演出など、まさに「ごっこ遊び」として極まった一作に仕上がっています。
・ 修行で強くなる最強への道
また、簡単操作で誰でも最強のZ戦士になれるゲームなのかというとそんなに「Sparking!」シリーズは甘くないことを忘れてはいけません。先ほども少し触れたように本作のバトルは、△や◻︎ボタンで攻撃、R2で気を溜めることで必殺技などを用いて戦っていきます。近接での殴り合いや遠距離から気弾を打ち込んだり、必殺技を決めて行ったりなど、様々な戦法で敵と対峙しています。ですが、ただ遠くで気を溜めて必殺技を繰り出したところで簡単に回避されてしまいますし、藪から棒に気を使いまくっているとすぐに隙が生まれてしまいます。

実際、プレイを開始してすぐにエピソードモードやオンラインバトルでボコボコにされたプレイヤーも少なくないと思います。かく言う私もストーリーモードの最初のラディッツ戦ですらその強さに少し引いてしまいました。
ではどのように強敵に立ち向かっていくのか。何度か戦闘を行っていく中でなんとなくわかってくるかと思いますが、「Sparking!」シリーズは近接戦闘を制するものが勝利へと近づくことができます。

ゲームでは近接戦闘においていくつかの駆け引きが用意されています。バトルでは近接において◻︎ボタンを連打または対応するコマンドを入力することで連続した打撃・ラッシュを繰り出すことができます。その際に重要となるのが、カウンターアクションです。R1ボタンを押すことでの「Zカウンター」やR3ボタンでの「リベンジカウンター」など攻撃に合わせてうまく差し込むことで追撃を止めることが可能になります。バトルにおいてこの行動が取れないと、とにかくラッシュを叩き込まれあっという間に負けてしまいます。

また、近接攻撃へともっていくための間合いも大切な駆け引きです。例えば、◻︎と×を同時押しすることで瞬間移動を行うことができます。併せて、ラッシュからコマンドを挟むことで「バニシングアサルト」と言う相手を吹き飛ばす技に派生させ、そのままブーストで距離を詰め追撃で追い込んでいくなど、どれだけ手数をもっていけるかが重要となります。

とはいえ、カウンターやブーストなどを乱発すると、コストを使い過ぎてしまいいざという時に対応できなくなることもあります。そのため、バトルでは近接戦における駆け引きと気をどのように配分していくかなどを考えながら戦っていくこととなります。
私もそうでしたが、序盤こそ相手の容赦ないラッシュにこれは勝てるのと思っていましたが、トレーニングモードでしっかりと基礎を理解しながら、徐々に覚えていくことで気持ちの良いバトルを楽しめるようになります。それこそ、悟空やベジータも何よりも修行を欠かさず行っていましたし、サイヤ人はやられてこそ強くなる戦闘民族です。強敵に何度も立ち向かう瞬間は俺もサイヤ人だと言う気持ちでトライしていました。
エピソードモードについて
・ 超まで網羅した新たなる追体験
続いてエピソードモードについて紹介していきます。本作では『ドラゴンボール』の物語の中からZから超までを楽しめるようになっています。ゲーム進行としては孫悟空やベジータ、孫悟飯、ゴクウブラック、ジレンなど各キャラクターに沿ったシナリオを選択して開始となります。例えば、悟空のシナリオとなる孫悟空伝ではラディッツとの戦いから力の大会でのジレンとの決戦までを追体験していきます。基本的にはダイジェスト風の進行ではありますが、名シーンではムービーがあったり、戦闘でキャラクターのセリフが用意されていたりなど、ただの紙芝居と言うわけではなくある程度は演出でカバーできています。

個人的にはブウ編のおまえがナンバー1だと言うベジータのセリフや、ゴクウブラックが家族に手をかけた事を知り、悟空がブチギレる瞬間など、バトルでテンションが上がっていることもあってか、しっかりと没入することができました。

また、『ゼノバース』や『ファイターズ』など超を補完しているゲーム作品もありますが、人気の高さもあってか基本的にはZをメインとすることが殆どです。その点で本作ではゴクウブラックやジレンのシナリオも用意されているのように、『ドラゴンボール超』の物語を追体験できるようになっていたのは嬉しかったポイントです。ファンの間でもやや賛否が分かれることが多い超ですが、ドラゴンボールの中でも凶悪な存在であるゴクウブラックや悟空が身勝手の極意に変身する瞬間など、魅力もしっかりとあるのでそこを表現できていたのは作品ファンとして満足感が高かったです。

一方で物語をキャラクターごとに分けたことで少し冗長さが生まれていたのは気になりました。原作を知っている方ならご存知のように悟空は敵を全て倒してきているわけではなく、例えばセルは悟飯が決着をつけます。ゲームでは悟空伝の場合悟空が行ってきた戦闘だけがフォーカスされるため、セルの決着は悟飯伝となります。そのため、キャラクターによってはやや同じようなシチュエーションが多く、少し間延びしているように感じてしまいました。もちろん、参戦キャラクターが多いからこそ、ベジータ伝ではキュイとの戦闘があったり、ジレン伝ではキャラクターの掘り下げがなされていたり、分けているからこその良さもあります。とはいえ、物語に沿った戦闘を行うメインルートがあったほうがまとまりがあったように思います。

また、ボリューム的に仕方ない部分はありつつ、プレイアブルキャラクターが殆どいない無印の『ドラゴンボール』や世界線の違う『ドラゴンボールGT』、「劇場版」などについては殆ど補完がなかったのは少し残念でした。有料追加コンテンツなどでもいいので実現してくれないかなと思っています。
・ あり得たかもしれない未来・IFシナリオ
また、エピソードモードでは「Sparking!」シリーズの醍醐味でもあるIFシナリオも用意されています。IFはメインシナリオにおける選択肢などで分岐するようになっており、原作とは異なる様々な展開が待っています。併せて、これまでのシリーズにおけるIFシナリオはイベント戦闘のような作りとなってましたが、本作では分岐によってある程度シナリオが進行するようになっており、想像以上にボリューム感のあるものとなっています。

IFシナリオは本当に様々で、例えば、悟空伝の場合はラディッツを初めとしてベジータやフリーザといった強敵に対して悟空がクリリン、ヤムチャ、天津飯などの仲間と共闘していく初期の映画作品を思わせるシナリオ。ベジータとトランクスによる親子の絆を描いたもの、悟飯が未来トランクス編で全く新しい敵と対峙する展開などファンにとってテンションが上がるものとなっています。

全体として多くのIFシナリオは「あり得たかもしれない未来」のような物語となっており、あまりにもとんでも展開などはなく、もう少しコメディっぽいのもあっても良かったかなとは思います。とはいえ、「Sparking!」シリーズにとって外すことのできない存在としてしっかりと作られており、シリーズファンにとっては満足なものに仕上がっていました。
スパーキングらしい遊び心
続いて、スパーキングらしい遊び心についても紹介しておきましょう。先ほども触れたようにシリーズではIFシナリオなどスパーキングならではの魅力があり、本作でも多くの要素が踏襲されています。例えば、「METEOR」で高い人気のあったキャラクター図鑑は最高の一言です。「METEOR」ではキャラクターに対してチチが様々なコメントをしてくれましたが、本作ではチチとブルマ、ビーデルの3名による掛け合いが楽しめます。それこそ、「METEOR」のチチはよく知らない人物に対してめちゃくちゃなことを言っている場合もありましたが3人になったことでバランスも取れてより解像度の高いものに進化しています。

個人的にも相変わらず、チチが毒舌でスーパーサイヤ人に対して不良と言い切る様は懐かしくて爆笑しました。
また、多くのプレイアブルキャラクターがいるからこその掛け合いもシリーズらしい魅力です。悟空とベジータという永遠のライバル同士を初めとして、ベジットとゴジータ、ゴクウブラックとターレスのような夢の共演までゲームならではの自由な組み合わせによる会話劇を対戦前に繰り広げてくれます。併せて、チーム戦などでは様々なバージョンの悟空をチームにすることで不思議な掛け合いが用意されていたりもするので、それらを探すだけでもファンにとっては楽しめるものとなっています。

知っておきたい・気になった点について
・カスタムバトルやオンラインについて
最後に知っておきたい・気になった点についても紹介しておきます。まず、今回の新モードとなるカスタムバトルについて紹介していきます。カスタムバトルはゲームオリジナルのシチュエーションでバトルを行えるエクストラバトルと、プレイヤー自身で様々なキャラクターやシチュエーションを作ることのできるエディットモードが用意されています。

このモードではプレイヤーの自由にバトルを作れるという面白さはありますが、シチュエーションや設定などに制限が多く、台詞なども音声がなかったりなど、あくまでもオマケのようなものになっています。もちろん、ファンこそ楽しめるものではありますが、メインモードくらいの勢いでプロモーションをしていたほどの仕上がりではないと言うのが正直なところです。

また、オンラインバトルに関してはこれから調整などもあるかと思いますが、現状としてはゴジータブルーなどの単純に強いキャラクターが席巻しており、初心者にとっては少しハードルが高いと感じるかと思います。併せて仙豆で半永久的に回復できるヤジロベーもオンラインでの人気が高く、オンラインに潜ると、ゴジータとヤジロベーと戦い続けているような印象ではあります。とはいえ、キャラゲーですのでそのあたりはある程度は仕方ないかと思います。
・難易度やバランスについて
また、難易度やバランスについても触れておきます。難易度に関しては先ほども紹介したようにカウンターなどのアクションをしっかりと叩き込む必要があるので、序盤は難しく感じるかと思います。とはいえある程度アクションのコツなどを掴んでいけばエピソードモードのクリアに関してはそこまで難しくないかと思います。

一方でバランス面に関しては遊びづらさを感じた点もありました。例えば、本作ではエピソードモードにおいてイージーとノーマルの2種類の難易度が用意されています。ですが、イージーでクリアした場合、分岐などが発生しないようになっており物語を完全にクリアすることが不可能となっています。併せて、悟空伝の最終面では分岐のタイミングがわかりづらく何度クリアしても正史とは違う分岐を辿ってしまうなど、難易度の調整がやや煩雑に感じました。全体としてエピソードモードにおける敵や選んだストーリー、分岐条件などの難易度はマチマチなことが多く、もう少し統一感のあるバランスにして欲しかったところです。
結語
いかがでしたでしょうか。
約17年振りのシリーズ最新作ということもあり、期待と不安がありましたが、想像以上に最新作として気合いの入った作品となっており、シリーズファンにとっては間違いのない作品だと感じています。
一部、難易度のバランスや物足りなさのある新要素など気になる点もあります。とはいえ、スピード感溢れるアクション、最多となるキャラクター数、シリーズらしさとも言える遊び心など、17年という期待値に対してしっかりと応えてくれる一作に仕上がっており嬉しい限りです。是非ともコントローラーを握りしめ、サイヤ人のごとく、戦闘に明け暮れてみてはいかがでしょうか。
また、現在、早期購入特典でプレイアブルキャラクターとして『ドラゴンボールDAIMA』の孫悟空(ミニ)が使用可能となっているように、本作では有料追加DLCにてキャラクターが追加されていくのも嬉しいポイントです。『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』と『ドラゴンボールDAIMA』から20名ほどの参戦が発表されており、今後の展開にも期待は高まります。