ブレイブリーデフォルト2 JRPGの全てが詰まった傑作【クリアレビュー】

おはようございます。いちごうです。

 今回は『BRAVELY DEFAULT II/ブレイブリーデフォルト2』のクリアレビューとなります。クリア時間にして45時間程度でしたが、これまで遊んできた全てのJRPGの集大成のような満足感を得られました。

ストーリー・バトルシステム・サウンドトラックなど、どれをとっても素晴らしく、JRPGの金字塔として歴史に残る素晴らしい作品です。前作や関連作品の反省を活かされていますので、シリーズプレイ済みの方は確実にプレイすべきと思いますし、完全新規のストーリーとなっていますので、ここから興味を持った方にも遊んでいただきたいです。

 また、レビューの後半にはネタバレありで物語についても考察していますので、クリア済みの方はそちらもご覧いただければ幸いです。では最後までお楽しみください。

『BRAVELY DEFAULT II/ブレイブリーデフォルト2』のポイント

JRPGの殿堂、スクウェア・エニックスが作り上げた新たな傑作

緊張感MAXの圧巻のバトルシステム

王道とメタフィクション的な展開で彩られる物語

Revo氏の壮大かつ優雅なゲームミュージック

ナンバリングの繋がりは無く新規ユーザーでも問題なく遊べる

目次

新しいRPGの担い手として

 シリーズは2012年に3DS発売された『ブレイブリーデフォルト フライングフェアリー』から始まりました。新規タイトルでありながら、細部にまで拘り抜かれたグラフィックや、斬新かつ奥深いバトルシステムが人気を博し、全世界100万本を超える売上を記録。その後、シリーズの開発メンバーを中心に製作され2018年に発売された『OCTOPATH TRAVELER』は、その完成度の高さから多くのゲーマーを唸らせました。

『OCTOPATH TRAVELER』(2018年)

 「ブレイブリーデフォルト」や『OCTOPATH TRAVELER』。このどちらもスクウェア・エニックスの「第二開発事業本部ディビジョン6」、いわゆる「浅野チーム」が制作を担っています。2012年の「ブレイブリーデフォルト」の発売前に浅野さんと、任天堂の岩田前社長とが対談をしているのですが、その中で強く印象に残っている言葉があります。それは「ゲームに興味がある方に『BRAVELY DEFAULT』はどういうゲームか?」と質問されたらどのように答えるか、と岩田さんに問われた際、浅野さんが「スクウェア・エニックスの新しい王道RPG」と答えていたことです。 実際、難易度の高いバトルシステムや、絵画風のグラフィック表現など、浅野チームの作品には一見クラシカルな雰囲気を感じます。ですが、そのクラシカルな雰囲気と現代風の物語展開とが融合した作品はまさしく「新しい王道RPG」の名に相応しい作品ばかりです。

『ブレイブリーデフォルト フライングフェアリー』(2012年)

 そんな、近年のJRPGを支える「浅野チーム」の新作として、今作「ブレブリーデフォルト2」は発売されました。クリアした上で考えても、「ブレイブリーデフォルト2」は「新しい王道RPG」というコンセプトが追求されていることを感じましたし、今プレイすべきJRPGとして歴史に残る作品だと確信しています。ちなみに、今作のタイトルは「ブレブリーデフォルト2」となっていますが、前作との繋がりは一切ないので、今作から初めてプレイしても問題ありません。

死の運命に抗う「新しい王道」の物語

 冒頭でも紹介しましたが、ストーリー・バトルシステム・サウンドトラックなどどれをとっても一級品であり、今作は10年に一度級のJRPGの傑作だと感じています。この三位一体のバランスが何より素晴らしいのですが、まずは一作目でも大いに評価されたストーリーについてです。動画の後半ではネタバレありでストーリーについて考えていければと思いますが、ここでは物語中盤以降のネタバレは控え「新たな王道」と自称される物語の魅力について簡単に扱っていきます。

 今作は、5つの国が乱立するエクシラント大陸を舞台としています。物語は、大陸に流れ着いた船乗りの主人公が、ミューザという王国の王女グローリアに助けられるところから始まります。主人公は、クリスタルの運命に導かれ、王女グローリア、魔導書を読み解くために旅をする学者エルヴィスと、その傭兵のアデルと、ともに旅に出ることとなります。

あらすじだけ聞くと、いわゆる西洋ファンタジー風の雰囲気を感じますが、今作には物語の序章で、一つの巧妙な「仕掛け」が明かされます。それは、主人公とプレイヤーしか知り得ないことなのですが、主人公は大陸に流れ着く前に海に溺れ死んでいるという設定です。そして、主人公は風のクリスタルに「海の中で死ぬか」、死を受け入れられないのであれば、「運命を否定し世界を救うか」が問われます。すなわち、主人公にとっては、生きるか死ぬか、プレイヤーにとっては、ゲームを終わらせるか続けるかの二択を迫られることとなります。少しメタ的な選択ではありますが、プレイヤーに対するゲームを進めていく動機付けとしてわかりやすく、個人的には序盤からストーリーへの興味が増していきました。

 また、今作ではこの主人公の「仕掛け」を残しつつ、それぞれの国を巡りクリスタルを集める物語が章立てで進行していきます。中盤までは、それぞれの章で仲間キャラクターの性格の掘り下げとともに、舞台となる国での波乱のストーリーが展開されます。それこそ海外ドラマ風の愛憎劇のような物語など、ストーリーの大筋とは関係がないものの、プレイヤーの興味を惹く物語が展開していきます。これらのシークエンスは王道JRPG風で、前作「ブレイブリーデフォルト」の4章までの物語、あるいは「ドラゴンクエスト」シリーズのようなロールプレイング感を存分に感じられると思います。

 前作では、このような「王道」の中盤までの展開を経て、終盤ではSF的な多元世界を巡るストーリーが描かれていきました。今作のネタバレ付きの解説は動画の後半で行いますが、個人的には、メタ的な展開を用いつつ一作目とは異なる方向性を示したと感じています。前作は、物語とバトルのどちらも素晴らしいものでしたが、個人的にそれぞれが独立している印象を感じていました。そういう意味で考えると、今作の方が物語の仕掛けが、ストーリーとゲームシステムとがうまく組み合わされていて「これこそRPG」と感じられる演出となっていました。

緊迫感が連続する圧巻のバトルデザイン

堅実な進化を遂げた「ブレイブアンドデフォルト」システム

 「ブレイブリーシリーズ」及び「浅野チーム」のゲームにおいて最も特徴的なポイントは歯応えのあるバトルシステムにあります。シリーズではバトルシステムに、敵と味方が交代交代で攻撃していくいわゆるコマンドバトルが採用されているのですが、それに加えて「ブレイブアンドデフォルト」というシステムが導入されています。「ブレイブアンドデフォルト」とは、戦況に合わせてキャラクターの行動回数を増やせるシステムで、通常のコマンドバトルに、猛攻を仕掛けるときと防御に徹するときとを見極める戦略性が生まれました。

 今作では、コマンドバトル制だった前作から、次のターンが誰かをわかりやすいアクティブタイムバトルへと変更となりました。アクティブタイムバトルは敵の行動タイミングがわかりやすいので、攻撃を仕掛けるタイミングを判断しやすく難易度の低下に繋がることは否めません。ですが、敵の攻撃力は圧倒的に高いですし、より視覚的にバトルを楽しめるようになったと思います。

 また、強敵は攻撃に対してカウンターをしてきたり、能力強化のバフ魔法に対してジャマーと呼ばれるやっかいな反撃をしてきたりと、歯応えも十分にあります。一回負けて、敵の特性を学んで、対応できるジョブを探して、ジョブレベルをあげて再度挑む、と強敵に対峙したときは1セットとなりますが、このバトル全体の満足度は高いです。

 正直、戦闘難易度の面だけで考えると万人向けとは言いづらいですが、システムを理解しながら難所を乗り越えてくゲームデザインはとても良くできています。RPGの面白さが凝縮されているので、RPGファンはもちろん、楽しさを理解したい人にとってもおすすめの作品です。また、一応は難易度設定も用意されており、三段階の難易度では敵の行動回数を少なくするような調整がなされています。RPG初心者にとっては低難易度のカジュアルでも敵の攻撃力の高さに面食らってしまうかもですが、バトルシステムを理解して挑戦を続けて欲しいです。

ジョブシステムとバトルデザインの欠点

 また、「ブレイブアンドデフォルト」システムだけでなく、併せて導入される「ジョブ」システムも非常に理解しやすく、ボスに有効なジョブを把握しながら勝利したときの達成感はなかなかのものです。例えば、圧倒的な強さだと感じる敵にもジョブを変更することで対処できたりと、バトルデザイン全般が綺麗に整理整頓されています。ジョブは約20種類ほど用意されており、うち10種類ほどは新規のジョブとなっています。

 各ジョブによって能力は大きく異なるため、どのジョブを使っていくかによって戦況が左右されます。また、各キャラクターには、メインジョブとサブジョブの二種類をセットできるので、攻撃と回復を組み合わせたりと非常に多彩な先方が可能になっています。たとえば白魔道士と吟遊詩人を組み合わせ、回復とバフ周りを任せ、シーフとファントムの組み合わせによるスピードで攻め込むのように自分だけの戦闘パターンを作っていくことが出来ます。所謂、レベルだけ上げておけばクリアできるような雑多なバランスではないので、RPGファンは十分に楽しめると思います。

 また、ジョブはジョブレベルを上げることでサポートアビリティを手に入れることが出来、このアビリティをうまく使っていくことが、戦闘で最も重要となります。ただ闇雲にゲームを進めていくのも一つの楽しみ方ではありますが、たとえばジョブ「すっぴん」にはジョブレベルを上げるために必要なジョブポイントの獲得量を増やすアビリティがあったりと、それらをうまく活用していくことでゲームをスムーズに進めていくことができます。文章で説明すると少々難しく感じてしまうかもしれませんが、実際にプレイしてみると非常にわかりやすく、RPGにありがちな複雑だけど覚えると楽しいのような敷居の高さもないので、初めてRPGをプレイする人がシステム的な楽しさを理解するのにも優れているように思います。

 ここまでバトルやジョブなど、前作を踏襲しながらもより遊びやすく、バランスの取れたシステム面について紹介してきましたが、決して欠点がないというわけでもありません。プレイした方も感じているかと思いますが、一番の問題点はあるジョブの攻撃があまりにも便利すぎるという問題です。一応ネタバレになるかも知れないので名称は控えますが、その攻撃があればある程度の難所を越えることが出来、ゲームクリア時間にもかなり影響してくるように思います。難易度の高い戦闘をジョブやアビリティによって、どう乗り越えていくのかというプレイヤーがノレる瞬間に対して、その攻撃だけやっておけばなんとかなる場面では少々冷めてしまうことがありました。もちろん、同じ戦闘でも難易度を変更して試してみると、多少、戦況に変化はありますし、先にも紹介したカウンターやジャマーなどの反撃で形勢逆転されるような場面もあるので、一概にバランスが悪いとはいえませんが、もう少し調整があっても良かったようには思います。

迫力の楽曲と丁寧なグラフィックス

大興奮のサウンドトラック

 『ブレイブリーデフォルト』シリーズを評価する上では、サウンドトラックの魅力を紹介しない訳にはいかないでしょう。シリーズ一作目では「Sound Horizon」のRevoさんが起用され、雄大な世界を想像させる壮大さと、往年のゲームミュージックを想起させるキャッチーなメロディーがゲーム全体に高揚感を生み出していました。そして、今作でも一作目に引き続きRevoさんが起用され、ゲームのテーマ曲や、フィールド、街のBGM、パーティキャラクターの必殺技の専用テーマなど全ての楽曲を手がけています。とりわけ、グローリアの必殺技で流れる曲はなんとも言えない悲壮感がたまらなく、バトルを盛り上げてくれていて、気に入っています。

 また、個人的にRevoさんが素晴らしいのは、その類稀な編曲センスにあると思っています。序盤から使われている楽曲が楽器隊の編成が変わってリミックスされ、終盤でも用いられるなど、物語の展開とプレイヤーの高揚感とが噛み合っていく様子はプレイしていて心地よかったです。やっぱり、こと『ブレイブリーデフォルト』シリーズとなるとRevoさんは外せないと改めて確信しました。

暖かいグラフィックス

 また、続いてはグラフィックスについてです。「浅野チーム」の作品を思い返してみると、AAAの美しい最新鋭の3DCGタイトルなどではないですが、非常に丁寧なグラフィック表現でこだわりを感じます。例えば、3DS版の『ブレイブリー』シリーズでは3Dキャラクターとイラスト風の背景とが合わさり絵画のような構図の美しさを感じますし、『OCTOPATH TRAVELER』や『TRIANGLE STRATEGY』では2Dと3Dを組み合わせたHD-2Dと自称される新しいグラフィック表現を提示してきました。今作では、『ブレイブリー』シリーズの正当進化として、人形劇のような3Dのキャラクターグラフィックとより繊細に描かれた背景がうまくマッチしています。ハードの性能が上がったことで、遠景は被写界深度の処理が施されており、フィールドには奥行きがうまれ、光源処理も美しく、戦闘でのエフェクトは非常に派手になっています。

『OCTOPATH TRAVELER』(2018年)

 また、個人的に感動したのはキャラクターの挙動や目線など、モーションが非常に細かく表現されていたことです。プレイする前は悪い意味で人形劇のような無機質なイメージを持っていましたが、想像以上に表情は豊かで、ボイスの違和感もなく、各キャラクターの感情をしっかりと理解できました。

ローディング・UI周りについて

 また、不満点をあげるとすれば、ゲームプレイ中一貫して発生する処理落ちと少し長めのロードがあります。ローディングに関しては、フィールドから街への移動で8秒〜10秒、戦闘時は暗転して5秒程発生ます。サブストーリーなど、フィールドを行ったり来たりする場面では、多少気になりますが、戦闘においては、戦闘スピードの変更も可能なため、ストレスに感じることはほとんどありませんでした。ダンジョンの構成上、階段がおおい場合などは比較的頻繁にロードは入りますが、フィールド間の移動と比べればそこまで長いものでもありません。

 それより少し気なるというか心配になるのが処理落ちについてです。戦闘開始時や会話中など、急に画面がカクつき、早送りのような動きになることが非常に頻繁にありました。移動自体に処理落ちでカクつくようなことはないのですが、少し没入感をそいでしまっている印象はありました。特に心配になったのが、フィールドでキャラクターに話しかけてストーリーが進行する場合などで、画面が2秒程度完全に静止することがあり、フリーズしてるのかなと何度かヒヤッとしました。とはいえ、これらのローディングや処理落ちは、気になる部分ではありますが、最近のゲームをある程度プレイしている人なら、許容できる範囲のものとだと思います。

 また、UIについては体験版などのフィードバックが生かされ、これでもかと細かく設定することができるので、ある程度の問題なら設定画面で解決できます。片手持ちモードで右手を選べないことや、フィールドマップ上のキャラクターの見た目を一人ひとりで選べないこと、ムービーの再鑑賞はできるのに、サブクエストのリストがないことなど、あともう少しだけ手の届いていない感じは否めませんでした。ですが、アップデードで後日対応となることが多い中で、ユーザーの意見を取り入れ、発売時からここまで調整がなされているだけでも素晴らしいと思います。

ネタバレありストーリーレビュー

 さて、ここからはネタバレを交えつつ今作のストーリーについて考えていきたいと思います。ネタバレを気にしない方、あるいはクリア済みの方のみお読みいただければと思います。

物語の構造について

 冒頭でも紹介しましたが、およそ40〜50時間程度で真エンディングまで到達できました。真エンディングと言うように、ゲームでは合計で4つのエンディングが描かれます。ですが、4つと言っても、近年のゲームで採用されがちなマルチエンドとは少し異なり、ゲーム冒頭で提示された「運命を否定する」というテーマに則り展開していきます。

 もう少し細かくみていきましょう。ゲームは、ルートの分岐などではなく物語を進行させることで、それぞれのエンディングを迎えます。ですが、真エンディング以外のエンディングでは、大切な仲間を失う辛い結末が用意されてます。各エンディングのあと、ゲームはトップメニューに戻るのですが、ここでプレイヤーには一つの選択肢が与えられます。それは、ゲーム上に選択肢が出ることはないのですが、このままゲームをやめるか、それでもゲームをコンティニューするかの二択です。プレイヤーがコンティニューすること、つまり、示された「運命を否定する」ことで、新たな物語が展開していくこととなります。

 また、ゲームには、「クリアまでの時間」がプレイヤーには事前にわからない、という特徴があります。それゆえに、いつ終わるか分からないからこそ、製作者は「エンディング」という仕掛けで、物語が終わったことを示します。「エンディング」とは、一般的に考えれば製作者が定めた物語の「運命」のようなものです。何をしようとも、物語である以上結末から逃れることはできません。ですが、今作では「運命」を認めないというセスの宿命と、プレイヤーの意思が合致することで、ゲームが別の展開を見せることとなるのです。プレイヤーに託された「運命を否定すること」は、物語の冒頭からセスが続けていたことに他なりません。

真エンディングについて

 そして、3つ目のエンディングでは、セスと仲間は真の敵を打ち破り、ついに元の世界へと戻ることができます。しかし、ここでもう一つの問題が浮上します。それは、セスにとっての元の世界とは、エクシラント大陸での生活ではなくゲーム冒頭で示された「自らが死ぬ世界」なのです。どれだけ、仲間が死ぬ「運命」に抗ってきたとしても、戻る先である「元の世界」とはセスの死ぬ運命です。 

 ですが、この辛い「運命」に抗う方法をプレイヤーは知っています。それは、もう一度コンティニューボタンを押すことです。この時点でセスは死んでしまっているため、この選択はプレイヤー、つまり私であり貴方の選択です。そして、コンティニューボタンを押すことで、運命は書き換えられ、セスは遂にエクシラント大陸に帰ることができます。

 ゲームは再び始まり、パーティメンバーの前にセスが現れます。いなくなったと思ったセスに対面した、グローリアはこちらを見つめ「おかえりなさい」と力強く言葉を発します。この瞬間、クリスタルの啓示とプレイヤーの操作によってのみ、生き長らえていたセスは、プレイヤーの手を離れても、生きることができたのだと思います。それゆえに、ゲームの全てが終わった最後に、セス、グローリア、エルヴィス、アデルの四人の大陸での「生活」のようなイラストが表示されます。運命を切り開いたセスとプレイヤーの物語は終わり、セスの人生が始まります。

運命を否定し続けることについて

 ほぼ蛇足となりますが、最後に「運命を否定し続けること」について考えてみたいと思います。なんとなく今作の物語に疑問を持った方のみ聞いていただければと思います。今作の、全てがハッピーエンドに終わるラストの展開について、プレイヤーによっては疑問を持った方もいると思います。個人的にも、運命を否定し続け、全員が生存するエンディングにたどり着くことに対して、それだけの物語的な強度があることは前提としつつ、若干やりすぎな部分もあると感じました。

 もちろん、辛い運命でも受け入れるべき、という話では全くありません。より良い選択をすべきだとは思います。ですが、4人が救われた世界をみて、ふと、この世界で救うべき人間は、あの4人だけだったのだろうか、と思ってしまったのです。もし、死ぬべきでない人が死んでしまっていたとして、またコンティニューすれば良いのか?と考えるとそれは無限ループになってしまいます。

 「ループ系」の物語では、無限に繰り返すことの難しさが描かれ、結末では、ある種の別れ選ぶ物語が多くあります。一方で、今作では少なくとも自分の見える範囲に関しては、幾度かのやり直しの果てに、幸福な結末をが提示されます。おそらく、私個人が「ループ系」の物語に慣れ親しんでいるため、「別れ」よりも「限定的な幸せ」を選択したことに違和感があったのだと思います。ですが、2021年の現在においては、このシナリオこそが妥当性を持っているのだろうと感じます。例えば、「ブレイブリーデフォルト」の一作目は、ゼロ年台の後半から2010年台にかけて流行した「ループ系」の構図とRPGとを融合したストーリーでした。一方で、今作ではメタという意味では共通していますが、「ループ系」ではなく「異世界転生系」の物語との同時代性が強いと思いました。眼前の「結末」を力強く否定して、より良い未来を勝ち取る試みこそが、現代の強さなのだと思います。

結語

 ストーリー・バトルシステム・サウンドトラックなどどれをとっても素晴らしく、何度も言いますが、近年で類を見ないほどのJRPGの傑作です。一部ジョブによって均衡が崩れてしまう部分もありますが、シリーズや関連作品での修正点はしっかりと反映されていて、バトルシステムは洗練されています。また、バトルだけでなくフィールドでもゲーム体験の全てを向上させるサウンドトラックは素晴らしくこれだけでも一聴の価値ありだと思います。

 そして、メタ×ファンタジーのストーリーは、今作で一定の完成を迎えたと思います。メタ要素を含むRPGはファミコン時代からありますが、主人公とプレイヤーの構図をしっかりと現代的な視点で描いたことは、今後とも評価されるべきと思います。少し長めのローディングなどプレイヤーによっては気になる部分もありますが、今確実にプレイしておくべき傑作です。まずは、これほどの作品を作り上げた浅野チームに賛辞を送り、そして次の挑戦にも大きな期待をしたいと思います。

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