
『ぽこ あ ポケモン』クリアレビュー|サンドボックスとポケモンの融合が生んだ、想像以上の傑作
ポケモンシリーズ初のサンドボックスに挑んだ本作は、ジャンル初心者への丁寧な設計とポケモンたちとの豊かな交流を見事に両立した意欲作だ。コーエーテクモゲームスとのタッグにより、クラフト・建築・街復興のループが心地よく機能しており、エンディング到達後も60時間以上遊び続けてしまうほどの吸引力がある。携帯モードやSwitch2のマウス操作との相性も抜群で、ポケモンファンにとってもサンドボックス好きにとっても見逃せない一本に仕上がっている。
レビュー概要
- ジャンル
- サンドボックス・スローライフ
- 開発
- ゲームフリーク、コーエーテクモゲームス
- 発売元
- ポケモン
- 対応機種
- Switch2
- プレイ時間
- 約40時間(クリアまで)
- プレイ状況
- エンディング到達
良かった点
気になる点
『ぽこ あ ポケモン』とは

まずは『ぽこ あ ポケモン』とはどのような作品なのか、簡単に紹介していきましょう。本作は今年30周年を迎えた『ポケットモンスター』シリーズのスピンオフタイトルです。ポケモンはこれまで『ポケモンスナップ』や『ポケモントローゼ』をはじめ、『不思議のダンジョン』シリーズ、『ポケモン+ノブナガの野望』、『ポッ拳』など、自社開発のみならず他社とのコラボも含め、数多くのスピンオフ作品を展開してきました。
本作『ぽこ あ ポケモン』でシリーズが新たに挑戦するのは「サンドボックス」です。サンドボックスゲームとは、広大な世界を舞台に建築やクラフトを自由に行えるゲームジャンルです。代表的な作品としては『マインクラフト』や『テラリア』、『ARK』などが挙げられます。特に『マインクラフト』は幅広い層から支持されており、今や「サンドボックス」は世界的に人気のあるジャンルといえます。
また、本作はゲームフリークとコーエーテクモゲームスのタッグによる作品となっています。コーエーテクモゲームスは2018年にサンドボックスを採用した『ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島』の開発を行っており、本作にも同作のスタッフが参加しています。そのような開発布陣もあり、ポケモンにとっては初ジャンルへの挑戦でありながら、コーエーテクモゲームスのノウハウも活かして、ポケモンのキャラクターとしての魅力をしっかりと引き出しながら、サンドボックスゲームとしても高いクオリティを誇る作品に仕上がっています。
人間もポケモンもいない世界で

本作の舞台はかつて人間とポケモンが暮らしていた世界。しかし時は流れ、大地は荒れ果て、気づけば人もポケモンも姿を消してしまいました。プレイヤーはそんな世界でふと目を覚ましたメタモン。メタモンは荒れ果てた世界でひとりぼっちのモジャンボと出会い、彼と共に世界に活気を取り戻し、再びポケモンや人間が帰ってくる街を目指して奮闘していくことになります。
ゲーム進行としては、シナリオに沿ったお題や、街にポケモンを増やしたり、緑豊かで住みやすい環境へ整えていくことで物語が進行します。復興を行う街はいくつかのエリアに分かれており、最初は「パサパサ荒野の街」から始まり、「ゴツゴツやまの街」や「ドンヨリうみべの街」と、チャプター形式のような形で物語が進んでいきます。
また、本作ではゲーム内時間ではなく実時間が採用されており、プレイする時間とゲーム内の時間は連動しています。建設する施設によっては1時間や1日といった時間がリアルタイムで進行する設計です。プレイヤーはサンドボックスで表現された世界でポケモンたちと触れ合いながら、なぜ人間やポケモンがいなくなってしまったのか、この世界に何があったのかという謎に、メタモンとして向き合っていくことになります。
ユーザーフレンドリーなゲーム進行

本作はジャンルとして「サンドボックス」が採用されているため、プレイに対してハードルを感じているユーザーも少なくないと思います。実際、サンドボックスの中にはプレイヤー自身が自由な発想でクラフトや建築を行うなど、クリエイティブを試されるような作品も少なくありません。自由度が高い作品は大好きですが、放任型すぎる作品に出会ってしまうと「思っていたのと違う」と感じてしまうこともあるかと思います。
一方で、『ぽこ あ ポケモン』は多くのユーザーに向けた設計が徹底されており、とにかくユーザーフレンドリーなゲーム進行が印象的です。シナリオ進行における目的をはじめ、素材を集めるミッションやポケモンからのお願いなど、タスクをこなしていくことでゆっくりと物語が進行するよう設計されています。
また、エリアによって「サンドボックス」らしいゲームプレイが徐々に理解できるようになるのも素晴らしいポイントです。「パサパサ荒野の街」では「みずでっぽう」や「いわくだき」などを教えてもらい、基礎的な「整地」や「壊す」を学びます。次のエリアでは「建築」や「ギミック」を学ぶ構成となっており、このようにプレイヤーは徐々に「サンドボックス」や「クラフト」を理解できるレベルデザインが徹底されています。
クラフトで広がるポケモンとの出会い

本作ではシナリオ進行などに加えて、ポケモンの「生息地」を作り出すことがタスクとして用意されており、より発見に満ちたゲームプレイを実現しています。緑の草むらやきれいな花畑、フレッシュ野菜畑など様々な「生息地」を作ることで、新しいポケモンと出会うことができます。生息地はフィールド各所に落ちている「ポケモンの気配」をもとに作ることができ、街をポケモンで溢れる活気のある場所へと変えていけます。
これらの「生息地」はポケモンと出会えるというわかりやすい報酬となっており、ゲームプレイに心地よいサイクルを生み出すことに成功しています。小さな達成感を多く用意することで、誰でも徐々に前進しているという体験を与えてくれているわけです。
また、仲間になるポケモンたちとの交流もゲームプレイを豊かにしてくれます。技を教えてくれるゼニガメやフシギダネ、建築を得意とするドッコラー、素材の加工をしてくれるアチャモなど、どれも「サンドボックス」のゲームプレイにうまく役割が落とし込まれています。さらに300種類ほどのポケモンが登場し、それぞれにテキストが用意されているため、ちょっとギャルっぽいフシギダネや筋肉のことしか考えていないゴーリキー、姉御肌のデカヌチャンなど、知っているポケモンでも思わぬギャップに出会えます。個人的には妙に懐っこいカラカラが印象的で、これまで以上に好きなポケモンになった気がします。トレーラーでも話題になった「うすチュウ」も非常に魅力的なキャラクターです。
クリア後も広がり続ける体験

メインとなるシナリオはいくつかのエリアのお題を達成していく方式となっており、大体30時間ほどでクリア可能です。とはいえ、サンドボックスゲームといえばクリア後が本番です。むしろシナリオはチュートリアルといっても過言ではありません。本作ではポケモン図鑑のコンプリートや、ポケモンの住み心地を良くすることで各エリアに設定された「環境ランク」を上昇させるなど、様々なやりこみ要素が用意されています。
シナリオで訪れた「パサパサ荒野の街」や「ゴツゴツやまの街」も、クリア後に再度訪れると見え方が大きく変わります。「ここに家を建ててみようか」「この道を補修しようか」「崖ごと削って広くしてみようか」と、まさに自分のクリエイティブを発揮する遊び場になるわけです。シナリオの中で手取り足取りサンドボックスゲームの遊び方を教えてくれる設計がなされているため、クリア後に学んだことを活かして一気に世界が広がる感覚は、ジャンル初心者こそ驚きがあると思います。個人的にもクリア後に「パサパサ荒野の街」の街づくりに奮闘していたら、あっという間に60時間ほどプレイしていて驚きました。
さらに本作ではシナリオとは関係のない「まっさらな街」も用意されており、プレイヤー自身のクリエイティブを思う存分発揮することができます。
携帯モードやマウス操作などSwitch2との抜群な相性

サンドボックスやクラフト、スローライフといった本作のゲームプレイは、Switch2との相性が非常に良い点も注目すべきポイントです。携帯モードでは非常に快適な動作を実現しており、解像度やフレームレートについてもTVモードとプレイフィールに大きな違いは感じません。実際、現在60時間強ほどプレイしていますが、その大半を携帯モードで遊んでいるくらい快適です。
また、本作ではSwitch2のJoy-Con2を用いたマウス操作にも対応しており、画面にカーソルが表示されて「いわくだき」によるブロックの破壊が可能となっています。特に建築や整地の場面では狙ったブロックを素早く破壊できるため、サンドボックスゲームとしての快適さが大きく向上しています。携帯モードとマウス操作、どちらもゲームプレイをより快適にするものとして機能しており、本作を遊ぶうえで大きなプラスとなっています。
気になった点について
最後に気になった点についても紹介しておきます。まず前提として、本作は全体的に完成度が高く、ゲームプレイを大きく阻害するような問題はほとんど見受けられませんでした。とはいえ、気になったのは素材の収納がエリアごとに分かれており、共通して利用できる収納が用意されていない点です。場合によっては素材を取りに別エリアへ移動する必要があり、クラフトや建築を行う際にやや煩雑さを感じる場面がありました。ファストトラベルも用意されていますが移動時間はやや長めで、特にシナリオ進行では頻繁にエリア間の移動を伴う場面もあるため、アップデートなどによる修正を期待したいです。
また、ゲーム進行やチュートリアルが非常にしっかりとしているからこそ、ポケモンを連れてエリア間を移動できることや、「そらをとぶ」を覚えたポケモンに頼む方法など、この辺りも丁寧な説明があってもよかったように感じます。ゲーム内のカメラで撮影した写真がSwitch2本体と連動していなかったり、ポケモン同士が会話を行っている際の表示が少しわかりづらかったりと、細かなUIや表示面については今後のアップデートによる改善に期待したいところです。
総評
『ぽこ あ ポケモン』は、ポケモンシリーズが新たに挑戦したサンドボックスというジャンルを、非常に丁寧な設計で実現した作品です。クラフトや建築を通して街を少しずつ復興させていくゲームプレイは、ポケモンたちとの出会いや交流と自然に結びついており、サンドボックスゲームとしての楽しさとポケモンの魅力が見事に融合しています。シナリオを通して段階的に遊び方を学べるレベルデザインや、ポケモンごとに用意された役割なども相まって、ジャンル初心者でも無理なく楽しめる点は非常に好印象でした。携帯モードやマウス操作などSwitch2との相性も良く、気づけば長時間遊んでしまうような心地よいプレイ体験が用意されています。いくつか細かな改善点こそありますが、ポケモンシリーズのスピンオフとして新たな可能性を感じさせてくれる意欲的な作品です。
9.0
/ 10